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モスクワ(Moskva)


ロシア
Russian Federation

人口●1億4247万人
面積●1709万8242km2
主要言語●ロシア語ほか
通貨●ルーブル
1ルーブル=1.77円
1人当たりGNI●1万2700ドル

極東アジアからヨーロッパまでのユーラシア大陸の北部を占める世界最大の面積(日本の45倍)を有する連邦共和国。9世紀にバイキングのルーシ族によってノブゴロド、キエフ両公国が建国され、総称して国名がルシアとなった。1917年の革命により世界初の社会主義国家ソビエト連邦を建国し、アメリカと2大国時代を築いたが、20世紀末に崩壊し、旧構成各国によりCIS(独立国家共同体)を創設した。

モスクワ Moskva

モスクワ河畔の森の中に広がる1147年に築かれた都市で、ロシアの政治、文化、科学、工業の中心都市。かつてはソビエト連邦の首都であり社会主義国家群 の心臓部であったが、1991年の8月革命によりその地位は大きく後退した。人口は1158万人(2011)。金属、機械、化学、車両などの工業も盛んで、モスクワ・ コンビナートの中心地。クレムリン宮殿を軸に、街路は放射状に延び、ボリショイ劇場、聖ワシーリー寺院、トレチャコフ美術館、国立歴史博物館などがある。

営業主体

Moskovski Metropoliten
URL:http://www.mosmetro.ru

路線図

※クリックで拡大します。

地下鉄の概要

現在12路線(196駅327.5km)で運行しているモスクワ地下鉄は、旧ソ連時代の「国家5ヵ年計画」により建設が進められ、運営はモスクワ市地下鉄公社が担当している。最初の建設計画は1931年に決定され、1932年に着工された。最初の開通は1935年5月、1号線Sokoljniki ~ Park Kuljtury 間9.5km及びその分岐線(3号線)Kaliniskaya(現Arbatskaya)~ Smolenskaya 間2.1kmの合計11.6kmであった。
計画にあたっては、ロンドン、ニューヨーク、パリ、ベルリンの各地下鉄からの技術支援を得たが、設計と建設は旧ソ連の技術者により行われた。環状路線と放射路線によって路線網が形成されている。環状路線である5号線はモスクワ市の中心を取り囲む直径約5km、全長19.3kmの路線である。当初、環状線の計画はなかったが、2号線と3号線の開業に伴い、市中心部の乗換駅での混雑が顕在化したため建設されたものである。モスクワ市とロシア各都市を結ぶロシア鉄道の多くの路線が5号線の駅と連絡している。
地下鉄建設は第2次大戦中も続行された。北西線及び北東線の放射線は1948年に完成、環状線は1950年から順次開通し1954年に完成した。建設にあたっては、シールド工法(シールドの直径6.1m)が採用された。1990年代までは資金不足のため建設はあまり進まなかったが、近年になって連邦政府の建設資金補助が増加されるなど、地下鉄建設に積極的になってきた。
2008年1月7日には3号線の延伸部分Park Pobedy ~ Kuntsevskaya 間及び4号線の延伸部分Strogino 駅が開業した。これを機に4号線のKuntsevskaya ~ Strogino 間が3号線に統合され、4号線の西方の終点はKuntsevskaya 駅となった。その後も漸次各路線での延伸開業が続き、2014年8月に7号線のTushinskaya 駅とSchukinskaya 駅の間にSpartak 駅が開業、同年12月には1号線が南に延伸され196駅目となるTroparyovo 駅が開業した。現在は、1・2・7・8・10号線の延伸工事や13号線の建設が進められている。
車両は2種類のタイプが採用されており、標準タイプの車両は長さ19m、4ドア、新型車両は長さ27m、4ドアである。4号線と12号線を除くすべての駅のホーム長は162mであり、標準タイプの車両で8両編成運転が可能な構造となっている。
モスクワ地下鉄の軌間はロシア標準規格の1520mmで、集電は第三軌条方式である。駅間の平均距離は1800mと長く、一番長い区間は3号線のKrylatskoe ~ Strogino 間で6.6kmもある。したがって、列車の平均速度(駅停車時間含む)も41km/hと速い。また、世界でも有数の高頻度運行を実施しており、ピーク時の運行間隔は90秒(40 本/時間)で運行している。
信号システムは、自動閉塞方式ATC を導入しており、CTC による制御方式を採用している。また、一部の路線ではATO による運転が実施されている。
豪奢な駅の建築・装飾で知られるモスクワ地下鉄であるが、地下深くに建設された駅が多いため、エスカレーターは毎分60mと日本の約2倍の速度がある。同じホームで乗り換えができるのは、6・7号線のKitaj-Gorod 駅、2・11号線のKashirskaya 駅、6・8号線のTretjyakovskaya 駅、3・4号線のKuntsevskaya 駅、3・8 号線のPark Pobedy 駅の5駅のみで、その他の乗換駅は、各線独立した駅名やホームがあり、地下通路でつながっている。地下鉄シェアはモスクワの全交通量の57% と非常に高く、世界有数の年間輸送人員を誇っている。
また、車内放送は、郊外から市中心部に向かう列車は男性の声で、市の中心部から郊外に向かう列車は女性の声(環状線では右回りが男性の声、左回りは女性の声)でアナウンスされる。


1回券
54×85mm


1号線を走る電車(Krasnoseljskaya 駅)
提供/秋山芳弘

データ

開通年1935年5月 軌間1520mm
営業キロ327.5km電気方式直流825V
路線数12 集電方式第三軌条
駅数196 運転保安ATC/自動閉塞式
運行時間5:45~1:15 最小運転間隔1分30秒
運賃制度均一制 列車運転線路右側
輸送人員682万人/日(2014)   

利用方法

運賃

30ルーブル均一(ICカード「トロイカ」を用いた場合)

乗車券

1回券、回数券等

旅客案内

ロシア語

その他

①エスカレーターでいったん出口に向かうと、改札を出て、改めて乗車券を購入しない限りホームに戻れない
②運転間隔を短くするために、列車の加減速度が大きい

地下鉄工事中に秘宝を発見

2011年に着工した1号線のYugo-Zapadnaya 駅から南方への延伸工事中に、貴金属や宝飾品が入った壺が3つ発掘されたと報じられた。16〜17世紀の女性用装飾品と鑑定されたこれらの「秘宝」は、モスクワ歴史博物館の革命前期コーナーに寄贈されたとのこと。

地下鉄博物館

1号線のSportivnaya 駅構内にあり、入場は無料で、主に地下鉄の歴史を中心に展示している。特に宣伝している様子はなく、ロシア語がわからなければ入口も見つけにくい。なお、ウェブ上では、日本人旅行者などによる訪問記がアップされている。

モスクワ地下鉄の駅名

モスクワ地下鉄の路線地図の中で、Kievskaya 駅とあるのは、実は「キエフ駅」のことで、キエフ方面への列車の出発する駅のことである。ロシア語で「駅」というのは「vokza(l 東京駅のような大きな駅、男性名詞)と「stantsiya(地下鉄の駅のような普通の駅、女性名詞)とがあり、地下鉄では後者が多く使われている。そこでKievskaya 駅で、キエフ(への)駅という時は形容詞「キエフ(への)」というロシア語も、stantsiya という女性名詞を修飾するため、主格ではKievskaya となる。stantsiya は省略されている。ロシアの地下鉄の駅名に「-skaya」というのが多く見られるのはこのためである。

豪華な駅の建築・装飾

モスクワ地下鉄は駅の建築と装飾の豪華さが有名で、観光客向けにツアーが組まれているほどである。Kievskaya、Komsomoljskaya、Novoslobodskaya、Mayakovskaya 駅などが代表的だが、近年建設された駅はシンプルで現代的なデザインとなっている。


“ 地下宮殿”にふさわしい豪華な装飾のKomsomoljskaya 駅
提供/秋山芳弘


4号線を走る新型車両(Aleksandrovskij Sad 駅)
提供/秋山芳弘

*一般社団法人 日本地下鉄協会 「世界の地下鉄ビジュアルガイドブック」より

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